古本屋通信

古書価の暴落=値崩れ

古本屋通信    No857    5月18日

 
  古書価の暴落=値崩れについて

 通信 No853 で、私は上田耕一郎の 『戦後革命論争史』 全二冊を300円でしか買い取らないと書いた。その前後のことを再現してみる。

 古本屋通信
 「売れるけれども著者がなんらかの理由であえて増刷しない」 というのは、商業ルートに乗っている書物では殆んどないでしょう。「上田不破兄弟の『戦後革命論争史』」は例外中の例外でしょう。これについて少し書きます。
 まずこれが良い本というのには少し抵抗があります。歴史的な意味があったし、入手し難い時代があったという意味では注目された本でしょうね。
 まず古本価です。一時に較べて大暴落ですね。私はいまこの本を持ち込まれたら上下二冊で300 円でしか買い取りません。売れないからです。岡山の他の古本屋は誰も買い取らないでしょうし、他の本に紛れていたら捨てるでしょう。これは私以外の古本屋が共産党関係に疎いからではありません。共産党を知らなくても、この本が売れる本なら、捨てられることはありません。その点では古本屋は優秀な商人です。


 仙台から下関に避難中さん
「日本の古本屋」で検索したら、「戦後革命論争史」はこれだけしかありませんでした。
戦後革命論争史 全二冊
上田耕一郎、大月書店、昭37、2冊
書砦 梁山泊 7,500円
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上下二冊で300 円でしか買い取りません。」なら、梁山泊さんは値段を1桁間違えてるんじゃないの?ということになりますね。



 古本屋通信
  いいえ、こんなもんです。間違いではありません。だから最近古本屋は詐欺みたいに思われてやりにくいんです。梁山泊さんがいくらで買い取られるかは先方の問題ですが、売価は社会科学の老舗、京都の島元さんの値付けとしては妥当だと思います。私もそれくらいの値を振ります。300円の買取りで、です。なんの良心の咎めもありません。これは全ての分野で変わらないでしょう。つまり10冊仕入れて1冊売れるという想定で、売買価格を決定するのです。しかし業者間以外では通用しにくい話です。だから買取り値はそのときにならないと明示しないのが普通です。「安いですよ。ご不満なら、お売りにならないでお持ちになってください」と言います。
 それと「戦後革命論争史」は7,500円であろうと 3,500円であろうと、売れるときには売れるし、売れないときには売れないという面もあります。これまたケシカランコトをいう事になるんでしょうが、これが古本屋の商売なのです。私の店についていえば、値付けは「日本の古本屋」の平均値ですが、社会科学は強気です。島元さんもそうでしょうね。これと仕入れ体系は全く別だという事です。しかし私の場合、常連さんには、仕入れが300円で、しかも余分の在庫があれば1000円でも売りますね。同業者から引き合いがあったら1000円間違いなしですね。大抵はこんなもんすが、これはオモテに出ません。そんなら正札どおでり買った客人に申し訳ないかというと、そんなことはありません。イチゲンさんは早くナジミになり、常連さんになることです。これが昔ながらの古本屋です。それが面倒ならブックオフに行くか、ネット通販で買わなければなりません。


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 今回の古本屋通信

 今回少し書き足そうと思ったのは、上記の私の説明では読者が不満だと思ったからです。つまりちっとも暴落してないじゃあないか。ちっとも値崩れしてないじゃあないか。そう思われれるんじゃあないでしょうか。たまたま「日本の古本屋」 には一件しかなかった。然し古本屋通信も同じ値を振るそうだ。あとみんな5000円前後の値付けではないだろうかと。その通りなんです。実は小売売価は余り下がってないんです。説明不足でした。

 暴落しているのは市相場 (業者間の交換会で取引される本の値) です。これが 暴落しているのです。これを値崩れと呼びます。とてもはっきりしています。『戦後革命論争史』 全二冊を岡山の交換会で回すとします。最低入札価1000円です。私が業界に入った直後には同業者が買ってくれました。私はこの本が高いことを知っていましたから、ドコソコで安く買い集めて4セット持っていました。市会に出品しました。倉敷の長山書店さんが確か3600円で落として呉れました。18年前のことです。いまはだれも票をいれません。ただし顧客注文を受けている場合は別です。それ以外は落札されません。それが分かり切っているからハナから出品しません。そのような本はだいいち客から買わないのです。それが商売です。

 ならそんな本を売るなと? あるいは1000円以内で売れと? いまは本が売れない時代です。全くニーズがないのなら店を閉じればよい。事実多くの古本屋が廃業しています。しかし全くニーズがない訳ではない、私の学生の頃はよく売れていました。戦後まもなくはもっと売れていたそうです。いまはそのころの十分の一でしょう。仕入れた本の一割を売って商売を続けなければなしません。私は『戦後革命論争史』 を300円で仕入れて、その20培の値で売ります。しかしアマゾン古書のサイトで1円表示されたら水を掛けて捨てます。その日は来ると思います。

 カール・マルクスの『聖家族』は「日本の古本屋」で1万円付いていましたが、ヤフオクでは1000円でも落札されませんでした。私は出品し、落札されないので引きました。そのご持ち込みはありませんが、もしあればやはり 300 円買取でしょうね。店売り表示はやはり一万円のままです。なんの後ろめたさもありません。これが理解できない者はそもそも客人とは言えないのです。無理解なヒヤカシを追い出して、私の店も随分楽になりました。
  1. 2014/05/18(日) 15:08:02|
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