古本屋通信 No 4228 2019年 10月07日
原野翹あきら先生のこと
せんじつ岩間一雄というペテン教授を論難した記事の中で私はこう書いている。
「 ・・・・・・・・・ こういう組織のトップにペテン師を戴いたらオワリである。全活動がペテンになるからだ。以前の原野あきら法学部教授は立派だった。岩間って何なのよ。・・・・ 」
私はちょっとだけだが原野あきら先生を知っているのである。それで自分のブログ内検索に懸けたら下の記事がヒットした。要するに原野先生の本が売りに出されていて私がまとめ買いしたという記事である。死亡に伴なう蔵書整理である。典型的な党員教授であった。本はあとで見ていただくとして、先生の思い出を書いておきたい。
私は1968年4月に岡山大学法文学部哲学科に学士入学した。入学式があるわけでもなく、授業が始まる数日まえ、たぶん4月5日ごろ、哲学倫理の学生の溜りにいて、顔見世をしていた。宜しくという挨拶である。そこに哲学の学生でもなさそうな少し年長の人相のよくない男が入ってきた。法学部の助手だと名乗った。どうも目的は私らしかった。原野と名乗っていなかったと思う。私が哲学科に学士入学したこと、香川を卒業してやって来たことはご存知だった。
有名な原野先生だという意識はなかったので、私が近藤洋逸先生を頼ってきたこと。哲学への関心は戦前の唯物論研究会に触発されたものであること、まあマルクスですな、と大見得をきって一時間ほど喋った。原野先生はもっぱら聞き役に徹して、最後に「恵まれた勉学環境で良いですなあ。まあ頑張ってください」と言われた。それだけのことである。そのご一回も学内で顔を見ることもなかったと思う。
法文学部の文科と法経は学生自治会も別だった。文科は民学同、法経は民青の拠点だった。これは常識なのだが、それぞれの拠点には必ずバックに教官がいた。文科は好並助教授であり、法経は若き原野助手と佐々木助手と言われていた。私でもそれくらいの情報は事前に入手して岡大に行った。
で原野先生がなぜ哲学倫理の学生の溜りに現れたかだが、これは同じ哲学の党員のMが呼び寄せたことが後でわかった。香川から一人党員がくるから見にこられえ、と。
私は学生運動をするために岡大に来たのではなく、むしろ逃げてきたのだが、入る前から情報は入っていた。岡大の中核派の総帥にMという男がいたが、私の学士入学と入れ替わりにすでに卒業していた。その妹が香川の私の一級上の民青だったのである。女子寮の寮長をやった活動家だった。妹が兄に伝えたのだ。岡大の民青は中核派から聞いたそうだ。Mはそう言っていた。面白く言ったのか、それとも中核派的には有り得る話だからか知らないが、中核派は「岡大の民青がテンデ弱いから、拠点の香川から一人指導に入るそうだ」 と言っていたという。だから岡大の民青は私の学士入学を事前に知っていた。ゆえに私は転籍のまえに中原と武田に挨拶に行ったのだ。中核派にそのように言われて中原や武田が面白いはずがなかったから。でも当時の民青でそういう組織の横断はありえなかった。かりに中核派の言うような事実があったとしても、それは田村正人さんのような中央委員クラスの同盟員だったろう。
その原野先生は最後まで党員を貫いたが、佐々木先生は北海道に渡り、党に反旗を翻した。札幌の例のグループだっただろう。
原野先生は定年退職をまたず病死された。先生の奥さんは中学校の英語の先生だったが、体調をくずされ入退院を繰り返しておられる。真佐代は自分の最晩年までお付き合いはあった。ただし御病気だから死は誰もお知らせしていないだろう。私もそうである
原野翹
はらの あきら
1941 - 2005
岡山大名誉教授 行政法 徳島県
亡くなってから14年53日過ぎました。
64歳で亡くなりました。もし現在も生きていたら78歳です。
1941年に誕生、2005年08月16日に亡くなりました。
生誕78年が経過しました。没後14年が経過しました。
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古本屋通信 No 58 11月22日
シンフォニー古本まつり
昨日はシンフォニー古本まつりの初日だった。今回は目録があったが、事前にほしい本はなかった。しかし会場で予期せぬ本があったので、それを買った。全点一口物で、出品者は S 堂書店さん、単価はオール百円均一。 以下、買った本をあげる。
☆民主的行政改革の理論 渡辺佐平編 大月書店 1978
☆現代の課題と日本共産党 下 宮本顕治 党出版部 1966
☆地域自治の政治経済論 遠藤晃他編 自治体研究社 1977
☆民主集中制論 榊利夫 新日本出版社 1980
☆21世紀と社会主義 聴濤弘 新日本出版社 1984
☆治安と人権 杉村敏正 中山研一 原野あきら 岩波書店 1984
☆もろき平和 上野博久 新星書房 1984
☆意識論 寺沢恒信 大月書店 1984
☆戦後日本の技術革新 中村静治 大月書店 1979
☆日本経済と危機管理論 二宮厚美 新日本出版社 1982
☆環境科学への扉 日本環境学会編 有斐閣 1984
☆理論戦線の到達点と課題 不破哲三・上田耕一郎 党出版局 1976
☆80年代の大衆運動 市川正一 新日本出版社 1981
☆世界平和と「勢力均衡」論 巣山靖司 新日本出版社 1985
☆日本の貧困 柴野徹男・菅沼副夫 新日本出版社 1983
☆社会科学学習辞典 労働者教育協会編 学習の友社 1966
☆共産主義運動の基本問題 宮本顕治 新日本出版社 1988
☆マルクス主義と環境問題 ギ・ビラオ 青木書店 1976
☆管理社会と民衆理性 日常意識の政治社会学 栗原彬 新曜社 1982
☆現代民主主義の理論 榊利夫 新日本出版社 1975
☆経営での党活動と党建設 不破哲三 新日本出版社 1986
☆マルクス主義研究年報 No2 1978年版 芝田進午責任編集 合同出版
☆マルクス主義研究年報 No3 1979年版 芝田進午責任編集 合同出版
☆唯物論研究年報 1988年版 唯物論研究協会 白石書店
☆経済思想史読本 水田洋・玉野井芳郎編 東洋経済 1978
☆前衛 1969年3月号 日本共産党中央委員会理論政治誌
東大闘争の到達点と今後の課題 ・・・・大野源一
大学問題における各党の政策 ・・・・・小林栄三
大学闘争におけるトロツキストの「理論」と行動 ・・宇野三郎
哲学シンポジウム2 史的唯物論と現代の思想的課題
古在由重 吉沢 達 森 宏一
高田 求 中原雄一郎 司会・河野公平
☆自治体政策づくり読本 大原光憲・横山桂次編 総合労働研究所 1981
☆法と経済の一般理論 藤田勇 日本評論社 1976
☆婦人問題と日本共産党 党中央委員会出版局 1979
☆社会主義的所有の基本問題 シュクレドフ 御茶の水書房 1973
☆反共風土と社会進歩 党中央委員会出版局 1983
☆デモクラシーの二つの伝統 セイバイン 未来社 1977
☆南ベトナム小説集 炎のなかで ベトナム外交出版社 東邦出版 1967
☆サイゴン解放作戦秘録 バン・ティエン・ズン 新日本出版社 1967
☆知りたい知らせたい女たちの戦後史 柴田悦子 創元社 1989
☆オルグ学入門 村田宏雄 勁草書房 1982
☆社会主義協会向坂派批判 日本共産党中央委員会出版局 1975
☆人間裁判 生と死をかけた抗議 朝日茂の手記 草土文化 1965
☆婦人論の学習 マルクスレーニン主義学習双書 村上益子 1972
☆現代技術論 有斐閣選書 中村静治編 有斐閣 1978
☆日中両党会談始末記 小島優編 新日本出版社 1980
☆日本共産党の45年 日本共産党中央委員会出版局 1967
☆日本共産党初級教科書(案) 教育部編 出版部発行 1968
☆投降主義者の観念論史観 中央委員会出版局 1986
志位和夫氏の2論文は本書のなかに収められている。
*変節者のあわれな末路 *退廃と遊戯の「哲学」
☆革新統一戦線の探究 日本共産党中央委員会出版局 1978
☆自由に生きる権利 小林孝輔 法律文化社 1972
☆高齢化社会と社会保障 角田豊他編 法律文化社 1978
☆東の風と西の風 毛沢東 新日本出版社 1958
以上48冊、数冊を除いて珍しい本ではない。このうち半分以上は在庫がある。はじめ、在庫のない本だけを抜こうかと思った。然し頁をめくるうちにタダナラヌ空気を感じた。一瞥して同じ旧蔵者からでていることはすぐ分ったので、旧蔵者の正体を知ろうと本を探った。次々と本を手にとり頁をめくった。なんと、なんと、本に何の痕跡もないのだ。48冊中だだの一冊にも書き込み、傍線、蔵印、メモ用紙、なんにもないのだ。完膚なきまでに打ちのめされた。 S 堂さんに訊くなど、恥じさらしができるわけがない。それで、ほぼ全点を持ち帰った次第である。いやはや凄い天才がいるもんだ。読んでいないことは絶対にない。天才なんだろう。こういう出会いがあるから、古本屋はやめられないのだ。
ひと晩、まっさらの古本と格闘して、なんとか旧蔵者の目星をつけた。今回の場合、私に守秘義務がないこと、旧蔵者が故人であるらしいことから、ここに書いてもいいと思う。旧蔵者は上記の本の著者のひとりと看た。しかし、違うかもしれないので、実名を書くのはとりあえず止めておこう。
- 2019/10/07(月) 19:45:54|
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