古本屋通信

元高校美術教員N君と電話で・・・

古本屋通信   No 2564    2017年  05月18日


    元高校美術教員N君と電話で・・・


  きのう元高校美術教員N君と電話で長話しする機会があった。それはN君から私の連れ合いに掛かってきた電話を私が借りたものだった。というのは、N君は岡山平和美術会(以下平美)の運営の中心を担っており、連れ合いは平美の一会員だが会計なので、出品関係のとりまとめで、N君と連絡を取り合う必要があった。その電話を私が横取りしたという次第だ。

 ちょっとN君を紹介する。
 Nは結婚前の旧姓で、今ではI だが、私は今でも旧姓Nを使う。香川県観音寺市の出身。結婚後は邑久郡邑久町(いまは瀬戸内市?)在住である。私より一学年下で、香川大教育時代から50年の付き合いがある。といっても私は絵を描かないからつきあいは薄い。コンスタントに付き合いが途切れなかったのは、連れ合いと平美での関係があったからだ。香川大では美術専攻で、連れ合いの一年後輩だったが、彼は卒業後に岡大特美の専攻科に進んだ。2年を経て1971年岡山県教員採用試験合格し高校美術教諭になった。以後、普通科高校を渡り歩いて10年前に定年退職している。今も洋画を描き続けており、平美の常連である。私は美術は門外漢、一切の評価は不可能だが、美術教育において彼は多くの高校生を岡大特美に送り込んでいる。たぶん天城高校教諭時代に合格者数トップを更新している。その実績は抜群である。つまり高校の進路担当や担任が何十人東大に送り込んでも、それは指導者の実績とは言えない。多くは生徒の才能と努力だろう。ところが実技の比率が高い美術や音楽系では殆んど指導教官の指導力の賜物なのだ。


 前置きが長くなったが、私がN君に是非とも聞きたかったのは元小学校女性教員Kさんのことだった。N君は教員になりたての頃から平美に係わっていたから、Kさんのことも知っているのではないかと思った。私は先日 「通信 No 2540 古本屋が手に入れた宝物」でこう書いていた。


・・・元小学校女性教員Kさんのことは、つれあいに少し聞いていたが、大半は買い取った書籍から得た知識である。非常に魅力的教員である。こんなに勉強していて、且つ魅力的な教員は初めてである。彼女は短期で離婚して以後ずっと単身だった。子供はいない。きっと男が付いて行けなかったのだろう。
 Kさんはずっと小学校教諭である。大学は京都教育大(当時は京都学芸大)中学校課程美術専攻である。私のつれあいは香川大だが、他はKさんと同じである。一回りKさんが年長だが、岡山の平和美術会草創期の中心だったという。そういう理論家として一家を成したらしい。中途は省略するが、つれあいは脱落組だった。あまり鋭くて付いて行けなかったという。
 


 


  以下がN君との電話でのやりとりである。

「女房の仲介でちょっと前に古本を引き取りに行った。「美術運動」などの良い雑誌があった。ゼニにはならんかったけど、レベルが高くて感動した。それは措いて、女房が平美に加わったのは子供らが中学校に入って世話が懸からんようになって後だ。だからKさんの平美時代のことがよう分らんのよ。あんたなら知っとるだろうと思って・・・」

N君 「ふるいこっちゃナ。40年くらい前のことじゃろう。奉還町の辺りで、よう一緒に絵も書いたナ。絵も上手かったが、論客じゃった。でも彼女は小学校で私は高校だったから、職場でどうだったかは全く知らない。ただ平美の中で当時論争があった。彼女はそれに敗れて会を去って行ったように記憶しとる」

「どういう論争なんで? 相手は誰だった?」

N君 「論争相手の名前は思い出せない。当時はKさんに限らず色々あって、去る者もいた。ただ彼女の時の論争は労働者問題と呼ばれていたと記憶している。論争の一方の中心は三井造船玉野の労働者画家だった。つまりKさんらが、画家主体の創造力をあくまで中心に据えて、いわば創作理論通りの会運営を主張したのに対し、玉野の労働者画家はもっと広く題材をとって、いわば統一戦線的な志向があったと思う」

「ならば今の平美では、Kさんの考えは完全に否定されている?」

N君 「まあそうだ。でも私は当時はKさんに近かった。教員や教員上がりと純粋労働者画家との対立だった。でも今ではそんな論争は意味がないだろう。Kさんも若くて先鋭だったから、自分が否定されたと思ったんだろう」


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 別件だが、今の平美でN君が喋ったことをメモしておく。平美展と高島9条展に係わる彼の意見。

「両方に加わっている者もいるが、あんたは9条展には参加していない」

N君 「そうなんだ。江草さんは平美の代表として、よくやってくれている。ただ私としては2本立ての意味がよう分らん。意味がないんと違うか? 出来れば9条はやめてほしいよ」

「門外漢だが、無意味だという事では同感だな。政治的だということ以前に9条なんて普遍性がないよ。オレだって長期スパンでは9条なんか廃止して自衛軍を持つべきだと思っている」

N君 「個々の創作者の思想信条は自由だ。でも会や展覧会に特定の政治的主張をかぶせるのは初歩的誤りでしょう。平美はずっとそれでやってきた。江草さんがそれだけじゃあ不満だから9条をやっているように見えない。けっきょく美術運動を二重構造にする意味が分らない」

「会に干渉はしないが、この点では江草さんは不勉強だね。だってコレは例えば民文なんか50年前にクリアーしている問題だろう。まあ出品者は出品の場所さえあれば、あとは何でも良いんだ。観る側もどっちでも良い、林ジュンのようにね」
  1. 2017/05/18(木) 09:15:27|
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