古本屋通信

アホらしいけど、からかっておこう

古本屋通信   No 2515    2017年  04月10日


    アホらしいけど、一寸からかっておこう


 又吉さん新作、歴代2位の初版30万部…新潮社
 2017年04月10日 18時22分
 新潮社は10日、5月11日に発売する芥川賞作家、又吉直樹さんの新作「劇場」の単行本の初版部数を30万部と決めたと発表した。
 同社としては、村上春樹さんの「騎士団長殺し」第1部、第2部や「1Q84 BOOK3」の50万部に次ぐ、歴代2位の初版部数という。
2017年04月10日 18時22分
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 又吉さん新作、初版30万部
 2017年4月10日 16時15分   時事通信社
 新潮社は10日、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さん(36)の新作長編小説「劇場」単行本(5月11日発売)の発行部数を30万部とすると発表した。芥川賞受賞作「火花」の初版部数の2倍に当たり、最近の純文学作品では例外的な規模となる。

 「劇場」は売れない劇作家を主人公にした著者初の恋愛小説。文芸誌「新潮」4月号に掲載されて話題を呼び、同誌は累計5万部を完売した。 




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 少し出版界で飯を食ってきたからと言って知ったかぶりはしたくないが、こういうのを読まされると妙にむかつく。まあ新潮社は前宣伝だが、コレ大嘘であってもバレないし、何のルール違反でもない。おなじ新潮社の社員でも嘘かホントか分からない。私は大嘘だと思うが、それは措いて、ブル新聞が出版社の宣伝の片棒を担いで記事にする、その軽さと言おうか、ペテン性が耐えられない。

 ここでいう初版とは、初版第一刷である。そういう意味でしか初版は使わない。

 いったい当初刷りを30万部一気に刷る(印刷して製本する)という意味か、それとも何回かに分けて刷るが、30万部までは奥付けの表示を「初版第一刷」とするという意味か? とうぜん後者であろう。前者は出版環境的にあり得ない。そしたら「初版部数30万部」なんて、言ってみるだけで殆ど意味がない。まあ、ここら辺りを書こう。

 まず初版部数30万部を額面どおり真に受けて、一気に30万部印刷・製本するとする。印刷上がりを保管する倉庫は、直ぐに出荷するのだから要らないものとしようか。とうぜん取次経由のパターン配本である。さて一気に30万部がさばけるのか? いまや中小小売り書店など存在しないから、大型書店たとえば丸善岡山店に配本する。いったい何部を初回配本する? 全国に大型書店など1000店もないが、仮に1000店としようか。一店あたり300冊の配本になる。即日か一週間以内に完売できる見通しがあれば、小売り書店は受けるだろう。然し、絶対に受けない。受けるわけがない。どんなに前評判がよくても、本は棚に並べてみないと分からない。書店員は誰でも知っている。まあ初回はせいぜい30冊だろう(岡山丸善なんか新刊配本はふつう2冊である)。売れたら補充する。その場合は自店の倉庫からではなく取次の倉庫から補充する。取次だってスペースはない。だから出版社はマメに増刷を繰り返す。一回の増冊数はせいぜい1000部である。

 出版界の常識だが、どんなによく売れるベストセラーでも、前もってベストセラーは約束されていない。ベストセラーは結果である。それと、どんなによく売れる本でも、ある瞬間から全く売れなくなる。いったん動きが止まったらビクとも動かなくなる。それが本である。だから初版30万部印刷など絶対にあり得ない。それでも村上春樹なら、あるかも知れない。他の著者ではあり得ない。

 私は又吉直樹の新刊が100万部売れる可能性を否定しない。だが、一気に初版30万部を印刷・製本して配本することはあり得ないと断言する。

 出版社の編集と営業は初回配本から一週間、それこそ胃が悪くなるような想いで小売り書店の棚を視る。掲載雑誌がどんなに好評でも、単行本が動かない例はいくらでもある。動いたらその都度小部数の増刷をかけるが、一気に数万部の増刷などあり得ない。

 文芸誌「新潮」4月号はたったの5万部か。これは完売などと自慢できる部数ではない。返品がなく、完売でとうぜん。「文藝春秋」の芥川賞発表号は昔は200万部突破だった。私は又吉直樹など聞いたこともないが、売れはしないだろう。村上春樹がなぜ売れるか、かれのファンはメディアと無縁な地点で村上を読むからだ。
  1. 2017/04/10(月) 19:18:32|
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