古本屋通信

朝鮮民主主義人民共和国と現代史

古本屋通信   No 2465    2017年  03月08日


  金正男事件を通じて少しだけ見えてきたリアル朝鮮民主主義人民共和国と世界現代史

 表題のテーマで書きたい。事件の経過は改めて書かないで、私の結論だけを書くことにする。経過を知るにはNHKウェブ記事が実に丹念に追跡している。頁のトップの「ジョンナム氏殺害」をクリックすれば読める。違う立ち居地から私も丹念に書き込んだ。それを通読して貰ってもよい。至近の両国(マレーシアと共和国)の外交上の対立する遣り取りに関しては書いていないが、それは事件そのものとは別だからだ。


 まず経過からはっきりしている事実だけを明記しておく。

被害者が金正男本人であるという証拠は何一つ発見されていない。これはマレーシア捜査当局と国家が、親族からのDNAが入手できていないという形で認めている事実である。

加害者が共和国国家であること、その共和国の意思を体現した工作員であること、共和国公民であること、この3つの何れかである証拠は何一つ見つかっていない。これは世界のすべてが認めている事実である。マレーシア捜査当局も、マレーシア政府もたった一度も共和国関係が殺したと言っていない。

被害者を最初から今日まで金正男と断じたのはそして加害者が共和国の国家意思による工作員であると断じたのは 「韓国」情報院(共和国と対立する分断国家の諜報機関KCIA)だけである。そして被害者を金正男本人であるかの報道を一貫して貫いてきたのは、おそらく日本のブルジョアメディアだけである。いや赤旗もこれに含めよう。これは事実に基づく報道という基準から異常極まりない。


 もう一つ確認しておこう。ブルメディアの派手な報道に較べて、一般のネットでの書き込みは極めて少ない。これはポータルサイトに事件関係の単語かフレーズを入れてみれば一目瞭然である。メディア以外では古本屋通信がヒットしたりする。私はコレを健全な世論の反映と見る。よく判らないことを喋らないのは臆病ではない。勇気である。それとも、書くのなら古本屋通信のように徹底的に追跡しなければならないだろう。


 ここで先ほどキンピーサイトに比較的長い投稿を見つけたので触れておく。私とは朝鮮問題で真っ向から対立する太宰ファンさんの投稿である。引用はしない。彼が共和国の犯罪を前提にして、日本共産党が共和国と同じ穴のムジナだと論難している。それは彼のコレまでの主張からは一貫性がある。レーニン以降の国際社会主義のすべてをスターリン主義の非人間として総否定する見解である。これは珍らしくない。そしてマルクスだけは救済する。これも珍らしくない。世界史的にはトロツキズムの潮流であり、日本でも1950年代から本格化した主張である。ところが私が太宰ファンさんに違和感を覚え、且つユニークさを感得するのは、彼がマルクスを評価しながら日本の安保体制を肯定する点である。アジアと日本の平和のためには安保条約も米軍基地も否定しないらしい。彼なりに理論はあるのだろうから私は批判はしないが、こういうマルクス肯定論者は珍しい。というより私は初めてお目にかかった。忘れないうちにメモした次第である。

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  本論に入る。結論は短い。

 事件関係の歪んだ報道を通じて明らかになったことは、朝鮮民主主義人民共和国が、われわれが予想していたよりもずっとマトモな国家だったということである。つまりふつうの国家なのだ。報道だけではそれ以上は判らない。朝鮮労働党内部の党内民主主義が十分機能しているのか、そこまでは判らない。しかし共和国人民に抑圧的に機能していると云う兆候は見られない。例えばマレーシア警察から釈放された朝鮮の男は北京で金正日を讃える歌を歌っている。これは何ら強制されていない。自発的に心から賛美した顕われである。これに個人崇拝の前近代を見るのは自由だが、私は素晴らしいと思う。この国に限らずともアジアの遅れて社会主義建設に入った中国やベトナム、それにキューバも同じだった。非難する日本こそ歴史的視点が欠けている。

 共和国は世界百数十カ国に在外公館を持っている。ということは朝鮮に同数の大使館が存在する。世界各国とふつうに付き合っている。なんら世界の孤児ではない。陸の孤島ではない。それが孤児や孤島に見える日本こそ、日米「韓」三国軍事同盟からしか世界が見えない鎖国の国ではないか。日本とアメリカと「韓国」以外は、どこも共和国を異端者と見做していない。それはマレーシアも同じである。

 アッ、いま思い出したから、付け加えておく。「共和国はスポーツが盛んで卓球なんか世界一強いだろう」 と私が書いたら、誰かが 「それは朝鮮ではなく中国だ」 と指摘したらしい。間接的に私に知らせてくれる人がいたので、訂正しておく。しかし共和国のスポーツもレベルは高い。私は金を湯水のようにつぎ込んで国威掲揚のためスポーツ選手を育成する日本のやり方に怒りを持っている。然し、それはおいて、共和国が極貧の凍土の国ならスポーツを許容する国力はないだろう。かつてのルーマニアがそうであったように、共和国はごく普通のスポーツの国なのだろう。

 共和国とマレーシアの対立を煽る日本の報道も異常である。ちょっとした対立はどこにでもある。互いにメンツもある。わずか数人の双方の大使館員をめぐる駆け引きは、事件の本筋とは別線である。まして両国が国交を断絶することはない。経済関係を無視して国家と国家の断絶はありえない。こういう期待を寄せてまで共和国を敵視する日本は異常である。

 ミサイル発射では、志位までも共和国非難の談話を発表した。ミサイル発射は明らかに日米「韓」、わけても沖縄の米軍基地と、米「韓」軍事ラインを意識した共和国のアドバルーンである。私はコレを支持しない。しかし理解する。志位談話には共和国包囲網の主要な環である日米安保はスッポリと欠落している。日本の国益の立場である。これで自公政権が共産党を恐れるわけがない。無責任なありもしない民進党・共産党野合を恐れるわけがない。安倍政権はまだ小池都知事の方が鬱陶しいだろう。だから都議選と同時の解散総選挙もあり得るのだ。

 これまでにしておこう。
  1. 2017/03/08(水) 01:44:06|
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