古本屋通信

出版社と本のこと

 古本屋通信   No 2412    2017年  02月05日


     出版社と本のこと

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    更新日時 : 2017/02/05    06:40


 きのう五十嵐仁氏のブログに、ご自身の新著が学習の友社から出版されたことが紹介されていた。それで学習の友社のHPを開いて同社の新刊本のラインアップを一瞥した。その感想は 「へえ~、これで元がとれるんかなあ」という事だった。

 私は F書店に1970年入社し、内1975~1985年の10年間、本の編集と営業に携った。1980年頃から出版の主力は東京に移ったが、岡山でも細々と出版活動を続けていた。岡山は年商7,8億円規模であった。但し単年度で黒字を計上した年はなく、10年間の累積赤字は10億円に達していた。粗利益ではトントンだったが人件費と社屋分担金を賄えなかった。人件費が払えなくて事業が継続できるわけはない。私は最後の1年間は部門の責任者だったので責任を取るというかたちで辞職した。

  私の辞職と同時に岡山の出版部門は廃止されたが、東京支社ではその後も約15年出版関係は残る。5部門あった出版の全面撤退は1990年代の後半だった。私は自分の退職後の内部情報は一切知らない。ここからは私の推測である。東京の出版部門の累積赤字は200億円以上だろう。私の推測はなんら会社の経営資料に拠る算出ではない。ひとつひとつの出版物を、私の編集と営業の感覚から割り出した想定である。

  ここからが私の書きたい事だ。F書店の書籍と雑誌で、著者に原稿料・印税を支払っていないケースは、私の見るところでは皆無である。話は進むが、私の出版社時代にも自費出版はあった。しかし自費出版社とルート出版社はハッキリと2分されていた。大手出版社も中小出版社も、自費出版物を手がけることはなかった。私の見解だが、当然そうあるべきだと思う。つまり商業出版物は売ってナンボ、売れてナンボである。初めから売れる見込みもない本を作るのは編集の堕落である。そういう意味だけで言えば、幻冬舎の本は見事である。

 私が古本屋を開店したのは1996年だ。社会系を得意としていたからその方面が多かった。社会系にも取次ー書店ルートに乗らない自費出版の本は多くあった。いわゆる大学の教科書である。出版社も特定されていたから、私たちは一目で識別できた。すべて悪いわけではないが、古本屋は無条件にツブした。悪いけれど売れないからゴミなのだ。

  しかし上記のような出版事情に異変が起ったと思ったのは 2000年前後だ。奇妙なものを発見した。お○の水書房の本である。学術出版である。装丁から組版レイアウトまで岩波に遜色ない。必要があって丁寧に読んでみた。なんじゃ、これは? どこかの教授の本だった。たまにはハズレもあるだろう、そう思って遣り過ごした。しかし以後、お○の水書房の本に注目した。結果は殆ど全滅だった。あとで知り合いの教授に聞いたが、百万円、二百万円と積んで出版して貰うそうだ。しかも数百部買取りの条件がつく。出版時のルート配本はない。但し、地方小出版流通センターを通じて注文品は小売り書店に流す。

  お○の水書房のようなケースが大手、中堅、小出版の殆どで取り入れられるようになったのは最近のことであろう。良いも悪いもない。これでなければ出版社は経営が成り立たないのだ。ただし大手は自費出版物の区別は付けている。

  話は振り出しに戻るが、私にとって新刊書店は従来かぎりなく魅力的な空間だった。たぶん年間100万円位は購入した(ちょっと注釈。いちばんパチンコで儲けていた時代限定である)。主に紀伊国屋と平和書房でだ。私はいまハッキリと気付いた。私は最近殆ど新刊書店に行っていない。私はこれは自分の知的衰えだろうと思っていた。しかし違う。ゴミみたいな本しか出版されていないから行かないのだ。古本のほうが余ほど魅力的なのだ。我田引水ではない。K先生は古本屋に行かないとパニックになる。しかし新刊屋に行かなくてもパニックにはならない。

  私がむかし買っていた本は、大月書店と青木書店の本である。ここの本は今でも赤旗に広告が掲載される。しかし注目したことも、買ったこともない。なぜだろうか。断定はしないが、本が死んでいるのではないか。もしかして編集者が望まない持込み原稿を本にした自費出版本ではないか。一点一点に編集者の息遣いが感じられないのだ。

  学習の友社の本は、全て自費出版本またはそれに近い本だろう。最後に五十嵐氏の新著の目次を貼って宣伝に協力する。とくに言いたいことはないが、ここで使用されている「弁証法」なる言葉ひとつとっても、私が編集者だったら黙認する事はありえない。編集の自殺だからだ。たぶん氏も商売で上梓したのだろうが、これが売れるほど、まだ党界隈は腐っていないだろう。広島学習協さんの意見が聞きたいものである。

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〒113-0034 東京都文京区湯島2-4-4
学習の友社  TEL:03-5842-5641 FAX:03-5842-5645
『活路は共闘にあり―社会運動の力と「勝利の方程式」』(学習の友社)

目次
はしがき
序章 共闘の弁証法
 野党共闘の始まりと暗転
 共産党を含む野党共闘の成立
 参院選での共闘が実現した背景と要因
 新潟県知事選で明らかになった共闘の威力と「勝利の方程式」
 弁証法的な発展と未来への希望
第1章 反転攻勢に向けての活路が見えた―16年参院選の結果と平和運動の課題
 はじめに
 1 与党と自民党
 2 野党の選挙協力
 3 安倍首相の勝因はどこにあったのか
 4 選挙後の展望と課題
第2章 「手のひら返し」の「壊憲」暴走を許さない―容易ならざる段階での憲法運動の課題
 はじめに
 1 容易ならざる段階を迎えた―参院選の結果をどう見るか
 2 安保法の廃止と発動阻止に向けて
 3 「壊憲」策動を阻止するために―憲法原理の破壊は許されない
 4 「護憲+活憲」による憲法運動の発展
 むすび
第3章 今日における社会変革の担い手は誰か―なぜ多数者革命なのか
 はじめに
 1 市民と市民革命
 2 現代の市民革命としての多数者革命
 3 多数者革命の課題と可能性
第4章 労働組合運動はなぜ重要なのか
 はじめに
 1 労働組合とは何か
 2 労働組合運動の領域
 3 労働組合運動が取り組むべき課題
 むすび
第5章 現代の多様な社会運動の意味
 はじめに
 1 社会運動とは何か
 2 今日における社会運動の特徴
 3 民主主義の揺りかご
第6章 戦後 70 年、国民のたたかい―それを受け継ぐことが、私たちの務め
 はじめに
 1 戦争に反対し平和を守るたたかい
 2 基地反対闘争と「平和的生存権」を守るたたかい
 3 人権と民主主義を守るたたかい
 4 人間らしい生活と労働を求めて
 むすび
終章 「トランプ現象」と大衆運動
 社会運動と選挙
 「アラブの春」から始まった社会運動の再生
 欧米における市民運動の発展と政治の変化
 内外情勢の弁証法的発展と新たな政治の可能性
あとがき
  1. 2017/02/05(日) 01:09:39|
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