古本屋通信

第2,3弾作品『セウガク 二年生』

古本屋通信      No 1391   4月12日

  第2,3弾作品 ー 『セウガク 二年生』

 きのう 『セウガク 二年生』 (昭和15年3月号) に掲載された坪田譲治の作品「肩をならべて」を転載したのだが、よく見るとその後にも傑作が載っている。黙殺するのはもったいないので、引き続いて転載することにした。じつは正直に云うと、この本、ヤフーオークションに千円スタートで流していた。しかし一回目に流れたので引き上げた。碌に見ないでオークに廻したのだが、流れてよかった。千円での落札は惜しい。きょうは選挙の投票日である。選挙に行くまえに記事を仕上げる。小学2年生向けだから、漢字には全てルビを打っているが、これは省かざるを得なかった(これは昨日もそうだった)。


 奉天のたかひ    枢密顧問官  陸軍大臣   河 合  操
 
三月十日 は 陸軍記念日 です。 この 日 は 日本軍 が ロシア軍 と たゝかって、 ただ今 の 満洲國 の 奉天 と いふ 所 で 大しょうり を しためでたい 日 で あります。
 奉天 の たゝかひ の 時、私 は 乃木大将 の おそばで たゝかって ゐました。 乃木軍 は わづか の 軍ぜい で いつ も つよい てき の ゐる ところ に ばかり むかった ので 大そう ほね が をれて、 たくさん の せんししゃ が できました。
 心がけ の りっぱな 大将 は、 
「陛下 の だいじな こども で ある へいし を こんな に せんし させ て しまった のは じぶん の おちど で ある。 じぶん の 二人 の むすこ が せんし した だけ では まだ たりない。 じぶん も せんし して、陛下に おわび まうしあげよう。」
 と おもって いらっしゃいました。 それで、 ある日 ぶか の もの に 馬 の ようい を いひつけて、てき の たま が 雨あられ と とんで くる たたかひ の ばしょ に 行かう と なさいました。 私 は びっくり して、「いけません。」 と いって、 むり に 大将 を おとめしました ので、やうやく 大将 は おやめ に なりました。 しかし その むね の 中 は どんな に おくるしかった こと でせう。 
 私 は 毎年 三月十日 に なる と、 あの ころ の 大将 の むづかしい おかほ を おもひ出さず には ゐられません。


  よあけ の ラッパ    田 川 英 子 ・ 作   川 島 は る よ ・ 画  
  「コケコッコー」 と 一ばんどり が ないて まもなく です。 いつ も きまって、 「トテトテトテター」 と いふ ラッパ の ね が、 村 の 小高い をか から なりひゞいて くる の でした。
 すると、 あちら の 家 から も、 こちら の 家 から も、 小さい 人かげ が ぴょこん ぴょこん と とび出して 来ます。 さうして ラッパ の なって ゐる をか を めざして かけあつまって いきます。
 「さあ、 あつまったら しんぐん だ。」
 ラッパ を ふいて ゐた 大きい こども が いひます と、 あつまった四十二人 の 小学生たち は ならんで げんき に をか を おりて いく の でした。
 さうして しゅっせいへいし の おうち を たづねて よあけ まで、 いっしょうけんめい に はたけ の しごと の おてつだひ を して あげる の です。 これ は 山梨縣×生村 の 小学生たち の かんしん な おはなし です。 


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 古本屋通信

 せっかく難儀な手打ちの印字をしたので、少しだけ書いておきたい。

 こういうかたちソックリの児童文学が近々の日本に登場する可能性はないだろう。しかし一般のブルジョアジャーナリズムではごく最近あった。例の人質事件をめぐる狂気だ。このキチガイは上記のキチガイと変わらなかった。

 考えてもみよ。「大東亜戦争」 中に日本兵が侵略の地で人質に捕らえられて殺されるというようなケースはあっただろう。殺されても当然、向こうは正当防衛である。今回の後藤さんらは民間人だったから、ケースは少し違うが、侵略軍の支配地域で暗躍したのだから、先方にすれば敵である。それが戦争だ。ここまではよい。ここから先、なんでブルジョアジャーナリズムが米軍と有志軍を非難せず、イスラム国を目の仇にしたキャンペーンを張らなければならんのだ。これファッショだ。戦前の日本と変わりゃせんかった。

 もうひとつ。後藤さんの著書。これは問題提起に留めておく。

 ダイヤモンドより平和がほしい―子ども兵士・ムリアの告白 (2005/7)
 もしも学校に行けたら―アフガニスタンの少女・マリアムの物語 (2009/12)
 ルワンダの祈り―内戦を生きのびた家族の物語 (2008/12)
 エイズの村に生まれて―命をつなぐ16歳の母・ナターシャ (2007/12)
 ようこそボクらの学校へ―DVD+book (NHK出版DVD+book) (2003/11)


 私は上記の戦時中の児童読み物と後藤さんの著書をまさに表裏の関係で捉える。もちろん顕われ方は違う。しかし本質は変わらない。つまり没階級的な正義をふりかざしながら、特定階級の利益を代表する読み物であることだ。戦時中の読み物だって「こころ温まる読み物」として、当時は没階級的だったのだ。
 
  1. 2015/04/12(日) 00:29:43|
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