古本屋通信

その出張は必要か?

古本屋通信    No 939  7月10日

  一寸待て、その出張は本当に必要か?



 7月9日(水)のつぶやき  2014-07-10 | 日記
 石村智子 @ishimura_t 09:52
今日は日帰り東京出張です。
今のところ都内は台風の影響はありませんが、どんより曇り空。
無事帰れますように…。




 古本屋通信

 今日の毎日新聞にベネッセホールディングの個人情報漏洩が大きく取り上げられています。この議論はたぶん尻切れトンボになるでしょうが、何処かで歯止めをかけないと、戦争国家の行く先とも関係して危険極まりない現状があります。だいいち名簿屋などという職種があるのがオカシイと思いませんか?

 この議論はそれとして一旦おきます。ベネッセ(当時は福武書店)が進研ゼミを始めた頃、入会を勧誘するDMを送りつけるための住所録をどのようにして入手していたか。それを当時の私の経験で書いておきたいと思います。



 そのまえに石村さんの出張について書きます。資本主義社会では商品を売るための営業部門が膨大に膨れ上がっています。時として生産部門を上回る人員が投入されます。その場合、営業経費をいかに節約し、売り上げをいかに伸ばすかが企業の死活問題になります。まあ、編集ばかりやっているとピンと来ないのです。ですから当時のベネッセでは「全員営業」ということが言われ、私なんかも入社の翌日から名簿集めの営業に行かされたものです。しかし日帰り出張はともかく、宿泊を伴う出張には事前に出張申請書を提出し、事後にも決済が要りました。所属部長と経理課長の二重チェックがあったのです。合言葉は 「一寸待て、その出張は本当に必要か? まずファックス、次に電話、どうしてもダメなら出張せよ。能率を考えて車か、電車かを決定せよ」。

 上記の石村さんのような出張は日本中どこを探してもないでしょう。無駄が企業を潰します。無駄が日本共産党を潰します。




 1970年春、私は福武書店に入社しました。配属された先は前年開始されたばかりの通信教育部でした。まだ進研ゼミの名はなく、進研の名さえなく、通信教育セミナーの名でした。それは珍しい試みではなく、受験生対象の通信添削指導講座でした。私自身も高校時代にオリオンという会社の添削指導を受けたことがあり、効果のほどは疑わしかったですが、励みにはなりました。当時から旺文社は別会社の英協の名前でこれをやっていました。

 福武書店がこれを手がけるのは、じつはこれが初めてではなく3回目だということでした。2回は失敗だったのです。3回目、社主は当時広島の第一学習社にいた光吉真澄を引き抜いて、本腰を入れて事業に挑んだのです。ただ光吉は福武書店の旧社員であり、社主にすれば抜かれた社員を抜き返したという思いがあったのでしょう。

 私の入社は極めて簡単でした。明日からでも出社してくれという感じでした。ひとが足りなかったのです。(関係ない事を省略します)。名簿集めの出張が始まりました。みんなそれぞれの仕事の合間を縫って出張に行くのです。私は大阪に行きました。いわゆる進学校に行くのです。行く先は高校の進路指導室です。使用目的がDMを打つことだと告げ、出来れば譲って欲しい、無理なら貸して欲しいと願い出ます。この出張は極めて楽でした。というのは先方は既に対処方法を決めており、営業の腕次第ということはなかったからです。① 無料でくれる。② わずかの手数料・実費でくれる。③ 貸してくれるが返却しなければならない。④ 一切の持ち出し禁止。


 ④ の場合、進路指導室をあきらめて直接生徒に当たります。これは校外の校門前で下校時にお願いします。ちょっと考えたら、ストーカーまがいに思われるでしょう。でも大丈夫でした。というのは進路指導室で、「ここでは規則によって渡せないが、生徒に直接当たってくれればよい」 というケースもあったからです。生徒に使用目的を言って依頼します。あとから送ってくれるように頼みます。御礼は図書券でした。コピーをとって返却しました。

 名簿は譲り受けや購入であろうと、借用であろうと、直ちにDMカードに転記します。これは主婦アルバイトの外注です。出来上がると、返却すべきものは返却し、譲り受けたものはコピーもとらないで断裁します。ちょっと確かではありませんが、製紙会社の断裁証明をとっていたと思います。横流しを疑われないためです。

 私は一年後には高校模擬テストの部署に変わりますが、変わってからも暫くは名簿営業を続けていました。3年くらい続けたでしょうか。ところが何時のまにか、名簿営業が消えてしまったのです。私がやらなくなったのではなく、全社から一斉に消えたのです。なんでも全て名簿屋から購入するということでした。再びDMリストの話を聞いたことはありません。そのご私はずっと出版畑でしたが、通信添削部門は日本一になり、対象を小中学生から、社会人にまで広げていきました。出版部門は赤字続きで、ついに廃止されるのですが、これは福武總一郎氏の英断だったでしょう。先代の哲彦氏には出来なかった事です。



 
 後註

 上記の文を書き上げてから、グーグルに 「福武書店 」と 「ベネッセ」 を入力して検索してみました。凄い数が出ました。しかしそれを追ってみて、まるで表現に値するものが見つからないのです。企業ですから、そういう範疇で統計や研究資料がヒットするのは当然です。しかし中には個人ブログもあるのです。驚きましたね。マトモに読めるものがないのです。全てゴマすりというわけではありません。対象と距離をとって斜めに構えている文もあるのです。然しそれらを含めて全部ゴミです。つまりマトモな批評能力、批判精神のある者はハナから書いていないのです。そしてそれは「福武書店」と「ベネッセ」に限らず、全ての企業法人について同じだろうと思いました。つまり企業タブーです。

 少しの時間で書き上げた上記の拙文ですが、これがグーグルのトップに来るべき一文なのです。これはあきれ返って言っているのです。資本主義下の企業としても貧しさを顕わしていると言えるのではないでしょうか。
  1. 2014/07/10(木) 08:03:45|
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