古本屋通信 No 2545 2017年 04月29日
労働と過労死問題
きょうの朝日新聞二面の記事は「中学教員の6割 過労死ライン超え 過重な仕事 教員悲鳴」である。読む気がしないから、読まないが、全て読める。感想は何を今さらである。
一年前、電通の女子労働者が過労自殺した。何度か書こうと試みたが書けなかった。ブル新聞の取り上げ方にも違和感があったが、裁判は裁判として見守っていけばよいと思った。電通の職場のアレコレは問題になろう。ただ一つはっきりしていることは、女子労働者の自殺くらいでは、電通資本はビクともしないということだ。来年も再来年も電通は大卒の人気企業であり続けるだろう。それは歪んだ資本主義社会だからではない、正常な資本主義社会だからなのだ。つまりブル新聞の過労死キャンペーンなどクソでもないということである。
今回の朝日の記事などヤラセ記事の最たるものだ。取材などしなくても分かりきったことである。小中高の教員で本を読む順番は、高校→小学校→中学校の順番である。中学教員は全く読まない。忙しくて読む暇がない事もあるが、けっこうパチンコや競輪はやっている。生活空間のどこからも本を読む必要が生まれて来ない。いくつか問題を提出しておきたい。
きのう店に元私立高校の数学教員がこられた。常連の勉強家で80歳である。ずっと私立K高校である。質問してみた「先生の教職生活での比重を仮に教科指導と生活指導に分けるとしたら、どのくらいの比率になるのでしょうか」。先生「それは圧倒的に生活指導です。高校の教員なんか授業の準備なんかゼロですよ。それで私立はけっこうやって行けます。ただ進学校になると教材研究やらないと生徒に舐められるそうです」。高校にしてこうだ。小中教員など趣味で読書するに過ぎない。
中学教員は地獄である。地獄であるからこそ、福山の管理主義教育が罷り通る。これを村井さんがいくら非難しても、教員の命が懸かっているから直らない。小学校教員だって中学校ほどではないがシンドイ。だから鬱病はじめ心の病での長期欠勤が後を絶たない。
しかし学校教員はそんなにシンドイ職業なのか? 私はそれを否定しない。だが一般的に民間企業に較べたら、数段楽である。楽だから結婚後も育児をしながら続けられる。これは私の体験からの結論である。
私自身の元職場のF書店だが、たしかに楽な職場ではなかった。私自身は一生懸命働いた。上昇志向ゼロで、労働者は労働しか売るものがないから労働力を商品として売った。安売りはしなかったが、サボらなかった。残業も進んでやった。でも、F書店の職場はサボろうと思えば、いくらでもサボれたのである。これは教員職場でも同様だろう。
電通の職場に戻る。私としては自殺者にあまり同情の気持ちが起きないのだ。なぜだろうかと考えてみた。つまり残業は強制されたものではなく、自主的なものだった? そうであっても、残業せざるを得ない職場それ自体に問題があるのではないかという反論はあるだろう。でもそう言っていたら限りがない。殺される前に逃げろである。これが唯一の正解であろう。
私はいまもってブラック企業だとか、ブラックバイトだとか言うのを聞くとゾッとする。電通はブラック企業ではない独占企業である。打倒目標にするのはよい。資本主義の大手企業ゆえに最後まで生き残るだろう。
このエントリーは何らかの結論を述べたものではなく、情況をラフ・スケッチしたものである。
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思い出したから付け加えておく。崎本とし子さんが以下のように書いていた。
「電通」の過労自殺から見えるもの・・・・労働基準法で、長時間残業の禁止を明記すべき!
2016年11月11日 崎本とし子 とし子からの手紙
電通という会社では若者の過労自殺が後を絶たないようです。優秀な若者の命を食いつぶす企業とはどんな「哲学」を持っているのでしょう。「人の命より仕事」「命より利益」という考え方でしょうか。
確かに生活していくためにお金はある程度必要だけど、生きて暮らしていることが前提です。どこか勘違いしている電通という企業は、「くるみん」という働きやすい職場として厚労省の認定を受けていたそうです。(ありえない!)
労働基準法は36条で残業の規制を記述していますが、労使の話し合いの「認める範囲」と緩めており、禁止していません。
何人もの若者の過労死が後を絶たない中、法で禁止するしかないのではないでしょうか。長時間労働を是正することは日本の国の課題です。法規制の時期だと私は思います。
がん健診だって、労働安全衛生法で義務付ければ受診は増え働き盛りの早期発見が増えるに違いない・・・と私は思います。健康診断の中にがん検診を入れるべきです。
命は大切なものです。ましてや若い人が親より先に不本意な思いで旅立つようなことは、なくさなければなりません。
電通に国の調査が入ったようです。このきっかけを作ったのは共産党の国会質問でした。共産党やるじゃないか!!
きゅさん等が大きくなれば命を大切にする政治に変わるなあ・・・と希望を持っています。 古本屋通信 いつもながらの文であるが2つだけ。「くるみん」 だが、これは女子労働者の出産と育児を保障する職場を先進的な職場として厚労省が認定したものである。つい数十年前まで「結婚退職」「出産退職」「育児退職」ということばが罷り通っていた。そういう日本企業では画期的である。電通もF書店も 「くるみん」に認定された。その意義を崎本が理解していないのは仕方がないが、私はこの限りで電通は先進的な職場であったと思う。だからこそ高学歴女子の人気企業だった。
もう一つは労働基準法での長時間残業の制限である。安倍政権が上限100時間を言い、自殺した労働者のお母さんが反対と叫び、ちょっとした議論になった。肝腎の全労連の見解がよく分からないのだが、私は基本的に法規制に反対である。いままでどおり36協定で個別労資(労使)に委ねるべき問題だと思う。理由は残業が労働者の要求であることもしばしばだからである。でも崎本は良いなあ。議員年金があるから食う心配がない。
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参考
残業上限は月60時間、繁忙期100時間 政府が改革案
高橋健次郎 2017年1月29日03時00分 朝日新聞
政府は「働き方改革」で、これまで事実上、青天井になっていた長時間労働に制限を設け、残業時間の上限を繁忙期も含めて年間720時間、月平均60時間とする方向で調整に入った。忙しい時には月最大100時間、2カ月の月平均80時間までの残業は認める。労使との調整を経て、年度内にまとめる働き方改革の実行計画に具体策を盛り込みたい考えだ。
現在の労働基準法は、労働時間の上限を「1日8時間」「1週間40時間」と定めている。ただ、同法36条に基づいて労使が協定(36〈サブロク〉協定)を結ぶと、法律の上限を超えた残業が認められる。
その残業時間は「月45時間、年360時間以内にするのがのぞましい」としているが、労使間で「特別条項」を付ければ、年6カ月までは青天井にできる。長時間の残業を設定しても罰則がないため、長時間労働や過労死を生む原因と指摘されていた。いわゆる「過労死ライン」と呼ばれる過労死の労災認定基準は、1カ月100時間、または2~6カ月の月平均80時間とされている。
このため政府は、労働基準法を改正し、残業時間の上限を原則として「月45時間」「年間360時間」と規定。そのうえで、企業の繁忙期に対応できるよう6カ月は例外を設け、「月最大100時間」「2カ月の月平均80時間」の残業を認める。その場合でも、「年間720時間」「月平均60時間」に抑えるよう義務づける。違反に対しては、罰則を科す。・・・・・・・・・・・・・・・・・・【談話】残業月100時間など到底容認できない
-時間外労働の上限規制等に関する労使合意について-
2017年3月14日
全国労働組合総連合
事務局次長 橋口紀塩 3月13日、政府の「働き方改革実現会議」で議論されている時間外労働の上限について、政労使の合意が成立したとの報道が流れた。時間外労働の上限について(1)年間では720時間まで、(2)2か月ないし6か月では平均は80時間まで、(3)単月は100時間「未満」まで、(4)月45時間を超える時間外労働は半年まで、法律で容認するという内容である。しかも、長時間労働が著しい業種については、上限規制の適用を「将来」に先延ばしし、生体リズムを守る重要な規制であるインターバル制度の導入は努力義務にとどめ、実労働時間に基づく残業代支払いを行わず、定額・働かせ放題にする「裁量労働制の拡大」と「高度プロフェッショナル制度創設」については撤回の確約がない。過労死をもたらす長時間労働を労働基準法に明記するなど、改悪以外のなにものでもない。全労連は反対である。
脳・心臓疾患の労災認定基準は、労働者の健康被害の実態をもとに、「発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる」としており、時間外労働80時間未満でも多くの労災が認定されている。また、過労死裁判では、月80時間台の残業実態について「公序良俗に反する」との判決がだされている。もしも、労働基準法に、合意の内容が記されてしまえば、従来の司法判断や労災認定基準に悪影響を及ぼすことは想像に難くない。また、36協定で定める時間外労働の上限を、限度基準を参考に月45時間以内におさえている労使は少なくないが、法が100時間もの残業を許容するとの誤ったメッセージが流れ、時間外労働を増長させてしまうだろう。
合意について、「青天井の労働基準法に初めて上限規制を入れた」と評価する見方もあるようだが、具体的場面を想定すれば、悪影響が広がる可能性の方が高い。
そもそも「一時的な業務量の増加がやむを得ない特定の場合」といいながら、年720時間もの時間外労働を認めるのはおかしい。年中忙しく、残業が月45~60時間などという状況であるなら、それは人手不足であり、雇用を増やすべきである。1年中トラブル続きなら、業務の在り方の見直しが必要である。いずれも時間外労働の上限規制を、これほどまでに緩めてしまう理由にはならない。
安倍総理大臣は施政方針演説で、塩崎厚生労働大臣は所信表明の中で、電通過労死事件にふれ「働き過ぎによって命を失うという悲劇を二度と起こさない決意で長時間労働の是正に取り組む」と述べている。今回の労使合意文書の中でも、「過労死・過労自殺ゼロの実現(中略)に不退転の決意で取り組む」とある。時間外労働100時間合法化は、これらの宣言に反する背信行為である。
合意文書には、「月45時間、年360時間の原則的上限」との文言がある。しかし、労働時間の原則は「週40時間、1日8時間」であり、例外としての時間外労働の上限が「月45時間、年360時間」である。今回の「名ばかり上限規制」合意は、いったん撤回し、原則をふまえた労働時間規制の検討を、至急、再開することを求める。 以上
- 2017/04/29(土) 08:25:19|
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