古本屋通信 No 160 3月20日
シンフォニー古本まつり
今日はシンフォニー古本まつりの初日だった。私はいつも買う側だ。午後から出掛けて、約1時間かけて10点買った。そのうちの3冊の書名をあげる。
① 『いつも労働者の中に 鴨川俊作さんを偲んで』 私が
「通信 No 30 ふたりの完結 昨9月22日 」で書いた本( 買い損った本 )をやっと買うことができた。57人のひとが追悼文を寄せている。追悼文集としては多いほうだろう。いまでは古本でしか読めない。ここでは
石井ひとみさんの全文を貼る
(資料1)。② 『カゲロウ異聞 坪井宗康詩集』 この詩集、私は実によく売った。といっても7,8部だが。店に常備している筈なのだが、切らして坪井あき子さんに譲ってもらったこともある。いまも手許に2冊ある。しかし今回は著者署名があったので買った。献呈先は、実名は遠慮するが元国会議員である。色々な事情で献呈された本を手放すことは失礼でも恥でもない。一部にあるかもしれない「誤解」は、この業界にある者としては氷解させたい。
坪井の本はどれも秀逸だが、この詩集は
装釘が飛び抜けてよい。私は
宮園洋は凄い装釘家だと思うが、そのかずある作品のなかでも、この装釘はベスト10に入るのではなかろうか。
それと、私はこの詩人の生前の詩集と、死後の本の区別がつかなくなるときがある。署名があるのは生前の詩集「だろう」。「だろう」と書いたのは死後の本でも、稀に署名があるからだ。ある古本屋から近代文学の大家の初版署名本十数冊がでた。その中に死後初版本数冊が含まれていた。サインは全冊が偽サインと推定される。古本屋はお咎め有りや無しや? 正解は、無しだ。署名は有無をふくめて、古本屋の感知・関知するところではない。「署名あり」と明記していてもだ。理屈をいえば、それが最終販売人の古本屋が書いた「署名あり」である証拠がないからだ。
③ 『けだもの考証録 くにさだ きみ詩集』 この詩集ももっている。なのに買った。理由はひとつ。挟んであった
一枚の著者の挨拶文が欲しかったからだ。私は時々、挟げもの欲しさに古本を買う。といっても、出版社の月報や宣伝物は要らない。自費出版またはそれに近い本の挨拶状だ。これは本文の自註もしくは解題に近いものだ。私はこの一枚が欲しかった。やはり貼っておきたい
(資料2)。 くにさだきみは私が最も好きな詩人だ。といっても詩は私には分らない
。『ミドウェイのラブホテル』以来のファンだが、詩について言うことはできない。詩集ではない散文集
『しなやかな抵抗の詩想 くにさだきみ詩論集』 が コールサック社から2010年に出版されて読んだ。ただ唸った。そのとき思いだしたのが、三宅陽介氏がまがね文学会で「ひとつ小説をかくには百の小説をよまなければならない」という意味のことを言ったことだ。いい詩は天才がかくと思っていた。然し、くにさだきみは凄い努力の人ではなかろうか。散文を読んでそう思った。詩人は少し近い人になった。
資料 1 若々しい好奇心・探究心 石井ひとみ
党中央での新しい任務のなかで、日を経るにつけ、しばしば鴨川さんのことが頭によぎり、一度お訪ねしたいと、かねてから思いつづけていました。
それは、中央でのしごとにたずさわってみて、あらためて鴨川さんのさまざまな問題への研究、学習への態度や党活動にたいする原則的な姿勢に学ばされていますと、ぜひ伝えたいと考えていたからです。その機会ももてずにおわり、大変残念で心のこりです。
人柄に直接ふれるようになったのは、私が県常任委員となった1985年。その時、鴨川さんは県副委員長をされていました。同じところで活動することになって、たびたび驚かされました。なにしろそれまでの印象は、「理論性が高くてまじめな方」というものでしたから。
まず、多彩な趣味。FM 放送からいろんなジャンルの音楽を録音して楽しんでおられたのもその一つです。時々私もそのテープをいただきましたが、「え、こんな歌手も知っておられるの」とびっくりするなど、若いアーティストたちにも通じておられました。
若々しい好奇心と探究心は、私たちにも刺激的でした。
また、みんなが疲れているなと感じられたら「お菓子のカンパ」といって、みんなに甘いお菓子をふるまわれるなど、細かい心づかいも印象的でした。
なによりも、すごい勉強家。新本が発売されたら、すぐ購入。「全部読まれるんですか」とお聞きすると、「目次を読み、ページをめくっておくと、何かに問題意識をもったとき、いざ、それに関係するものを読もうとするとき、すぐにでてくるから」といわれていました。鴨川さんにこういう資料はありませんか」と尋ねると、翌日には、それが机の上におかれていました。「どんな整理をされているのか、一度みせてください」とお願いしたら、「ダンボール箱にいれるだけで、とてもいま人に見せれる状況じゃないから、また」と言われてしまいました。ダンボール箱が何箱もあるなかで、必要なものがすぐでてくるのが不思議で不思議で・・・・・。
いま、あたらしい雑誌や本が届くたびに、「鴨川さんはこうされていたな」と思いながら目次をめくっています。鴨川さんから私なりに教わったこと、ぜひ引き継いで、次の人たちにも伝えていきたいと思います。(日本共産党中央委員会組織局次長)
資料 2
詩集「圧」をつくってからのち、二十年近い歳月を経ています。第一詩集に「圧」という名をつけようと思ったとき、わたくしは、つづく詩集の題名は、何としても「抗」でありたいと念じて来ました。けれども、日々、心に鬱積し、屈折をつづかるものは、容易に「抗」とはなりがたく、ようやく編み得たものが、この「 けだもの考証録 」です。
恥しい作品です。
「 抗 」とはとても名付けがたく、題名のとおり、けだもの臭い作品ですが、わたくしは、この詩集を組むことで、あらめてみなさんのご批判にふれ、「抗」への足どりを確かなものにしていきたいと考えました。
ハガキを折込んでおります。
厚かましいお願いではございますが、どうぞ、ご批判、ご感想等、お寄せくださいませ。
なお、上梓にあたってご援助くださいました、土井大助、滝いく子、坪井宗康、道満誠、沖長ルミ子諸氏をはじめ「励ます会」にご参加くださいました先輩や友人のみなさん、発行の仕事に直接携って下さいました上村利子氏に対し、心から厚くお礼を申し上げます。
けだもの臭い詩集ながら、あなたの心のどこかで溶かされ、あなたとぢかに触れあえますように・・・・。 くにさだ きみ
古本屋通信 註 文中の黒字部分は縦組みで傍点が付されていた個所だ。
別件
古本屋通信
先日の私の「問題提起」に対して、石崎徹氏がそのブログで短文を書いている。私のリンク集から読める。かれは私の誤解との見解らしい。討論はしないと明言したので禁欲したいが、有難かったのは事実だ。それから氏の頁、私は小説は歯が立たないが評論には目を通す。三浦だとか新船の名がなつかしかった。氏の今後の健筆を期待したい。
- 2013/03/20(水) 21:44:33|
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